工事の契約書はいらない?金額に関係なく書面が義務とされています
建設工事の契約書は、金額の大小にかかわらず書面で交わすことが義務づけられています。下請の工事も例外ではありません。
今回の記事は建設工事の請負契約書についてになります。長い付き合いだから注文書だけで進めている、といったことはありませんでしょうか。流山市・柏市・松戸市の事例をもとに整理します。
工事の契約書の結論
- 書面による契約は、元請・下請にかかわらずすべての工事で義務です
- 何を書くかも決められています。金額と工期だけでは足りません
- 相手の合意があれば、電子契約で代えられます
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書面の義務に、金額の線はありません
国土交通省の資料には、こう書かれています。書面による契約は、元請負・下請負に係わらず全ての建設工事請負契約について義務づけられています。
ここに金額の条件は付いていません。許可が必要かどうかを判断する500万円の線とは、別の話です。軽微な工事であっても、契約書は書面で交わします。
実務では、見積書を出して口頭で了解をもらい、そのまま着工する形がよく見られます。長い付き合いの相手だと、なおさらです。しかし、この形は義務を満たしていません。
そして困るのは、もめたときです。言った言わないになったとき、書面がないと立場が弱くなるのは受注した側です。追加工事の代金、工期の延長、材料の値上がり。争いになる場面は決まっています。
何を書くかも決められています
契約書に書く内容も定められています。国土交通省の資料に挙げられている主なものを並べます。
工事内容、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期、前金払または出来形部分に対する支払の定め、設計変更や工事の延期・中止があったときの工期の変更、代金の変更、損害の負担、天災その他不可抗力による工期の変更と損害の負担。
さらに、価格等の変動に基づく請負代金や工事内容の変更、第三者に損害を与えたときの賠償金の負担、注文者が資材を提供したり建設機械を貸したりする場合の内容と方法、検査の時期及び方法と引渡しの時期、工事完成後の代金支払の時期及び方法、瑕疵担保責任または保証保険契約等に関する定め、債務不履行のときの遅延利息や違約金、紛争の解決方法が挙げられています。
並べてみると分かるのは、ほとんどが「予定どおりに進まなかったとき」の取り決めだということです。金額と工期だけの紙では足りません。
| グループ | 書く内容 |
|---|---|
| 決まっていること | 工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期 |
| お金の受け渡し | 前金払や出来形部分への支払、完成後の支払の時期と方法 |
| 変わったときの扱い | 設計変更、工期の延期や中止、天災、価格の変動 |
| 終わったあと | 検査の時期と方法、引渡しの時期、瑕疵担保責任 |
| もめたとき | 遅延利息や違約金、紛争の解決方法 |
電子契約でも構いません
紙でなければいけない、という話ではありません。国土交通省の資料では、双方の合意があれば国土交通省令で定める情報通信の技術を利用した措置によって書面に代えることができるとされています。
現場ごとに紙を往復させる手間を考えると、電子契約のほうが早い場面は多いです。押印のために事務所へ戻る必要もなくなります。
ただし、相手の合意が前提です。こちらが電子で送りたくても、注文者が紙を求めるなら紙になります。取引を始めるときに、どちらの形で進めるかを決めておいてください。
電子契約そのものの有効性については電子契約は本当に有効?電子署名法の話でも整理しています。
見積りの段階から見られています
契約書の前段にも決まりがあります。建設業では、見積りの内容にも適正化のルールが置かれています。
労務費を不当に削った見積りを出す形は、契約の入口の問題として扱われます。この点は労務費を削った見積りは出せませんで書いていますので、あわせてご覧ください。
見積りから契約まで、順番に書面を残していく。この流れができていれば、契約書だけを慌てて作る必要はありません。
工事の契約書でよくある質問
Q. 長い付き合いの元請で、毎回注文書だけです。こちらから契約書を求めてよいのでしょうか。
求めて構いません。書面による契約は元請・下請にかかわらず義務とされていますので、相手にとっても守るべきことです。角が立つのを避けたい場合は、自社の体制を整えている最中だという言い方で切り出す方法もあります。追加工事や工期の変更が起きたときに、書面がある側が守られます。
Q. 契約書のひな形は、どこかからもらったもので大丈夫ですか。
記載すべき内容が入っているかを確認してください。金額と工期だけのものや、設計変更や不可抗力のときの取り決めが抜けているものが出回っています。自社が受ける工事の形に合っているかも見てください。合わない条項をそのまま使うと、いざというときに機能しません。
Q. 追加工事を頼まれました。あらためて契約書が要りますか。
工事内容や請負代金が変わるのであれば、その変更を書面にしてください。契約書に設計変更のときの取り決めを入れておけば、変更の手続きも進めやすくなります。口頭で追加を受けて、あとで代金を請求できなくなる形がいちばん多い事故です。
工事の契約書の理解度クイズ
Q1. 書面による契約が義務になるのはどの工事でしょう。
A. 500万円以上の工事だけ
B. 元請の工事だけ
C. 元請・下請にかかわらずすべての建設工事
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正解:C。金額の条件は付いていません。
Q2. 契約書に書くこととされていないものはどれでしょう。
A. 天災があったときの工期の変更と損害の負担
B. 現場で働く職人の氏名
C. 紛争の解決方法
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正解:B。職人の氏名は契約書の記載事項ではありません。
Q3. 電子契約で書面に代えるために必要なものはどれでしょう。
A. 双方の合意
B. 行政への届出
C. 公証人の認証
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正解:A。相手が紙を求めるなら紙になります。
追加工事の代金でご相談をいただいた事例
松戸市の内装業の方から、追加で頼まれた工事の代金を払ってもらえないというご相談をいただいたことがあります。うかがうと、契約書はなく、やりとりは電話だけでした。
当初の工事の分は請求できましたが、追加分の説明に時間がかかりました。頼まれた内容を送ったメールが1通だけ残っていたのが救いでした。
今日からできるワンポイントアドバイス
契約書をすぐに整えるのが難しくても、やりとりを文字で残すことは今日から始められます。
電話で追加を頼まれたら、その日のうちにメールかメッセージで「本日お話のあった〇〇の工事、金額は〇〇円、工期は〇日までで進めます」と送っておく。相手が否定しなければ、それも記録になります。
そのうえで、次の工事から契約書の形を整えていってください。順番としては、よく受ける工事の型に合わせた契約書を1つ作り、そこから流用していくのが早いです。
建設工事の請負契約書のまとめ
- 書面による契約は、元請・下請にかかわらずすべての建設工事で義務です
- 許可が必要になる500万円の線とは、別の話です
- 記載する内容も定められていて、多くが予定どおり進まなかったときの取り決めです
- 双方の合意があれば、電子契約で書面に代えられます
- 契約書が間に合わない間も、やりとりを文字で残しておきます
つまずくのは、信頼関係があるから紙は要らないと考えてしまう場面です。書面は相手を疑うための紙ではなく、あとで困らないための紙です。
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