契約書の専属的合意管轄は変えられます。相手の本社所在地のまま押さない
こんにちは。
千葉県流山市の行政書士むらた事務所です。
今回の記事は契約書の合意管轄についてになります。
最後のほうに書いてある裁判所の名前を、そういうものだと思って読み飛ばしている、といったことはありませんでしょうか。
ここは交渉できる条項です。
流山市・柏市・松戸市の事例をもとに整理します。
この記事の結論
- 管轄の合意は民事訴訟法11条にもとづくもので、書面が要件です
- 専属的と付加的では、意味がまったく違います
- 条項がないほうが自社に有利になる場面もあります
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合意管轄は「どこで裁判をするか」を先に決める条項です
契約書の終わりのほうに、こういう一文が入っています。
本契約に関する紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
根拠は民事訴訟法第11条です。
第一審に限り、合意で管轄裁判所を定めることができるとされています。
同条第2項で、この合意は書面でしなければ効力を生じないとも定められています。
契約書に一行入れるだけで効力が生まれます。
逆に、その一行がなければ合意はありません。
ここを読み飛ばすと、揉めたときに相手の本社がある都市まで通うことになります。
弁護士を現地で探すのか、こちらから出張してもらうのか。
どちらにしても費用が乗ります。
条項がなければ、地元で訴えられる場合があります
では、管轄の条項がない契約書は不利なのでしょうか。
そうとも限りません。
合意がなければ法律のルールで決まります。
原則は民事訴訟法第4条で、被告の所在地を管轄する裁判所です。
法人なら主たる事務所や営業所の場所になります。
もう1つ、民事訴訟法第5条第1号があります。
財産権上の訴えは義務履行地の裁判所にも訴えられます。
そして民法第484条により、お金を払う債務は原則として債権者の現在の住所で履行するものとされています。
持参債務の原則です。
つまり、こちらが売主で代金を請求する側なら、義務履行地は自社の所在地になります。
地元の裁判所に訴えを起こせる、ということです。
専属的合意管轄で相手の本社所在地と書かれていると、この道が塞がれます。
条項を消すだけで選択肢が増える場面がある、という意味です。
専属か付加的かで、意味がまるで違います
もう1つ見るべきなのが、専属という言葉の有無です。
専属的合意管轄は、そこ以外では裁判できないという定めです。
法律で認められた裁判所を、合意で切り捨てる形になります。
対して付加的合意管轄は、法律で決まる裁判所に加えてそこでも裁判できる、という定めです。
選択肢が増えるだけなので穏当です。
単に「〇〇地方裁判所を管轄裁判所とする」とだけ書かれていると、専属か付加的かで争いになることがあります。
どちらの意味かを書き切るほうが安全です。
相手が大手で条項を動かせないときは、被告の所在地を管轄する裁判所とする書き方を提案してみてください。
訴える側が相手の地元へ出向くルールなので、どちらにも公平です。
管轄の条項がない場合、どこへ訴えられるか
契約書に合意管轄の定めなし
↓
民事訴訟法4条 → 被告の所在地の裁判所
+
民事訴訟法5条1号 → 義務履行地の裁判所
↓
民法484条により、代金の支払は債権者の住所が原則
↓
代金を請求する側は、自社の地元でも訴えを起こせる
| 条項の型 | 訴えられる場所 | 自社が遠方の相手と結ぶとき |
|---|---|---|
| 専属的(相手の所在地) | その裁判所のみ | 不利。出向く一択 |
| 付加的(相手の所在地) | 法定の裁判所+その裁判所 | 選択肢は残る |
| 被告の所在地とする | 訴えられた側の地元 | 双方に公平 |
| 条項なし | 法定の裁判所すべて | 請求側なら地元も選べる |
よくある質問
Q. 相手が示した契約書の管轄を変えてほしいと言えますか。
言って差し支えありません。
管轄は取引条件そのものではないため、金額や納期に比べると動かしやすい条項です。
実務では、被告の所在地を管轄する裁判所とする案を出すと通ることがあります。
どうしても動かない場合でも、専属を付加的に変えられないかは聞いてみる価値があります。
Q. 少額の取引でも裁判所まで気にする必要がありますか。
少額のときほど効いてきます。
請求額が140万円以下であれば簡易裁判所の扱いになりますが、その裁判所が遠方だと、回収額より交通費と時間のほうが大きくなりかねません。
結果として請求そのものを諦めることになります。金額が小さい取引ほど、近さが実利につながります。
Q. 千葉県内の事業者どうしなら、どこの裁判所になりますか。
合意がなければ、被告の所在地か義務履行地を管轄する裁判所です。
流山市・柏市・松戸市の事業者であれば、千葉地方裁判所松戸支部が地元の管轄にあたります。
県内どうしの取引なら、無理に条項を入れず法律のルールに委ねるという選択も現実的です。
理解度チェッククイズ
Q1. 管轄の合意が効力を持つための要件はどれでしょう。
A. 口頭でも足りる
B. 書面でしなければならない
C. 公正証書が必要
答えを見る
正解:B。民事訴訟法11条2項の定めです。
Q2. 専属的合意管轄の意味はどれでしょう。
A. その裁判所以外では裁判できない
B. 法定の裁判所に加えて選べる
C. どちらの意味にもなる
答えを見る
正解:A。付加的合意管轄とは正反対です。
Q3. 代金を請求する側にとって、義務履行地はどこでしょう。
A. 相手方の所在地
B. 自社の所在地
C. 契約を結んだ場所
答えを見る
正解:B。民法484条の持参債務の原則によるものです。
体験談・事例
松戸市の製造業者様から、取引先の契約書を見てほしいというご相談をいただいたことがあります。
最後の条項が、相手方本店所在地の地方裁判所を専属的合意管轄とする、という内容でした。相手は関西の会社です。
被告の所在地を管轄する裁判所とする案をお出ししたところ、先方もそのまま受け入れました。
ワンポイントアドバイス
契約書を受け取ったら、最後の3つの条項から読んでください。
管轄、解除、損害賠償です。
この3つは取引がうまくいっている間は登場しません。
登場するのは揉めたときだけで、そのときには修正がききません。
あとから効いてくるのは終わりのほうの条項です。
まとめ
- 管轄の合意は民事訴訟法11条にもとづき、書面が要件です
- 専属的と付加的では、残る選択肢がまったく違います
- 条項を消して法定の管轄に委ねる選択もあります
ここまでが管轄条項の考え方です。
ただし実務では、どこで裁判をするかより前に、裁判にしないための備えのほうが効きます。
検収の基準、支払の期日、遅れたときの取り扱い。
この3つが具体的なら、揉める場面自体が減ります。
行政書士むらた事務所では、流山市・柏市・松戸市を中心に(ご相談内容によってはオンラインで全国対応)、契約書の作成と内容の確認、取引条件の書面化をお引き受けしています。
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