退職金での会社設立!年金カットを防ぐ「事前確定届出給与」の活用法
こんにちは。
千葉県流山市の行政書士むらた事務所です。
今回の記事は、退職金を元手にしたシニア起業と役員報酬の受け取り方についてになります。
「会社を設立して役員報酬をもらったら、楽しみにしていた年金が大幅に減らされてしまった」といったことはありませんでしょうか。
今回は、年金受給額を減らさずに報酬を受け取るための「事前確定届出給与」の仕組みと注意点を解説します。
【この記事の結論(3つのポイント)】
・役員報酬と年金の合計が一定額を超えると年金が減額される在職老齢年金制度があります
・月額報酬を下げて事前確定届出給与で支給すれば年金カットを合法的に防げます
・届出期限や支給日を1日でも間違えると会社の経費にできなくなるため要注意です
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なぜ年金が減らされる?在職老齢年金の壁
シニア世代が退職金を元手に会社を設立し、社長として役員報酬を受け取る場合、最も注意すべきなのが在職老齢年金制度です。
これは、毎月の「役員報酬(標準報酬月額)+過去1年間の賞与を12で割った額」と「基本月額の年金」の合計が一定額(令和6年度基準で50万円)を超えると、超過分に応じて年金が支給停止(減額)される仕組みです。
つまり、せっかく起業して稼いでも、役員報酬を高く設定しすぎると、これまで納めてきた年金が受け取れなくなってしまうというジレンマに陥ります。
事前確定届出給与で年金をフル受給するカラクリ
この年金カット問題を解決する強力な手段が事前確定届出給与の活用です。
事前確定届出給与とは、「いつ、いくら支払うか」を事前に税務署へ届け出ることで、役員へのボーナス(賞与)を会社の経費(損金)にできる制度です。
では、なぜこれが年金対策になるのでしょうか。
その理由は、厚生年金における賞与の計算上限ルールにあります。
厚生年金において、賞与として計算される金額の上限は「1回の支給月につき150万円まで」と決められています。
極端な話、ボーナスを1,000万円受け取っても、年金機構の計算上は「150万円」として扱われるのです。
これを利用し、毎月の役員報酬を極端に低く設定し、残りを事前確定届出給与として一括で受け取ることで、計算上の収入を劇的に下げることができます。
| 項目 | 通常の役員報酬(月額50万円) | 事前確定届出給与の活用(月額5万+賞与540万) |
| 月額報酬 | 50万円 | 5万円 |
| 賞与(年1回) | 0円 | 540万円(※年金計算上の上限は150万円) |
| 年金計算上の月収 | 50万円 | 17万5千円(5万+150万÷12) |
| 年金の支給停止 | 大幅に減額される | 全額受給できる |
このように、年金計算上の月収を基準額の50万円以下に抑え込むことで、年金を1円も減らされずに満額受け取ることが可能になります。
1日の遅れが命取り!事前確定届出給与の罠
非常にメリットの大きい制度ですが、税務署のチェックは極めて厳格です。
事前に届け出た「支給日」と「支給金額」を、1日でも、あるいは1円でも間違えると、支払った賞与の全額が会社の経費として認められなくなります。
もし540万円が経費否認されれば、会社の利益が不当に高く計算され、莫大な法人税のペナルティを支払うことになります。
資金繰りが苦しいからといって支払いを遅らせることは絶対に許されません。
自己流で設定して法人税の負担に苦しんだA社長
過去にご相談いただいたシニア起業家のA社長は、インターネットの知識だけでこの制度を利用しました。
しかし、届出書に記載した支給日に会社の口座に十分な現金がなく、「自分が社長だから数日遅れても大丈夫だろう」と、3日遅れで自身の口座へ振り込みました。
後日、税務調査が入り、数日遅れた事実を指摘され、数百万円の賞与が全額経費否認されてしまいました。
結果として、年金を満額もらう以上の多額の法人税を納めることになり、会社設立早々に資金繰りがショート寸前になってしまったのです。
専門家を通さずに自己判断で実行したことを、A社長は深く後悔されていました。
ワンポイントアドバイス
事前確定届出給与の支給日は、会社の資金繰りに絶対に余裕がある時期に設定することが鉄則です。
また、会社設立直後からこの制度を利用する場合、設立日から原則として「2ヶ月以内」に税務署への届出が必要になります。
定款の作成から法人設立、社会保険の加入、そして税務署への届出まで、スケジュールに一切の猶予はありません。
疑問を解消するQ&A
Q1.事前確定届出給与の届出期限はいつですか?
新たに会社を設立した場合、原則として「設立の日から2ヶ月以内」または「株主総会等の決議をした日から1ヶ月以内」のいずれか早い日となります。
既存法人の場合は、通常の決算月の手続きに合わせて提出します。
Q2.業績が悪化したため、予定していた支給額を減らしてもいいですか?
原則として認められません。
ただし、会社の経営状況が著しく悪化し、客観的にみて業績悪化事由に該当する特別な事情がある場合に限り、臨時改定事由として減額の届出が認められるケースがあります。
Q3.合同会社でもこの制度は使えますか?
はい、合同会社でも利用可能です。
株式会社における株主総会決議に代わるものとして、社員の同意書等を作成し、それに基づいて税務署へ届出を行います。
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【参考URL】
・千葉県警察:https://www.police.pref.chiba.jp/
・千葉県庁:https://www.pref.chiba.lg.jp/
・e-Gov(法令検索):https://elaws.e-gov.go.jp/


