行政書士試験|国家賠償法2条を基礎から整理【1条との違い・判例・覚え方】

Contents

1. 国家賠償法2条の位置づけと条文構造

国家賠償法2条を理解するために、まず押さえるべきなのはこの条文がどこに置かれているかです。
国家賠償法は全6条しかない短い法律ですが、その中で1条と2条は明確に役割が分かれています。

  • 1条:公務員の職務行為による損害
  • 2条:公の営造物の設置・管理による損害

つまり2条は、行政活動の結果として存在する「物」そのものが原因で損害が生じた場合を想定した規定です。

条文構造の整理(試験用)

国家賠償法2条1項の構造は、試験対策上、次のように分解できます。

  1. 公の営造物が存在する
  2. その設置または管理に欠陥がある
  3. その欠陥によって他人に損害が生じた
  4. 国または公共団体が損害を賠償する

ここで重要なのは、「誰が何をしたか」が要件に含まれていない点です。
1条で必須だった「公務員」「職務行為」「故意または過失」といった要素は、2条には一切出てきません。

この段階で、1条と2条は責任発生のロジックが別物だと認識しておく必要があります。


2. 公の営造物とは何か(試験用定義と具体例)

次に、「公の営造物」という言葉を正確に整理します。
日常用語ではないため、ここが曖昧だと2条全体がぼやけます。

試験用の定義

行政書士試験レベルでは、次の理解で十分です。

国または公共団体が公共の目的のために設置し、管理している有体物または施設

ポイントは3つあります。

  • 国・公共団体が関与している
  • 公共の目的がある
  • 設置または管理がされている

「所有」よりも「管理」が重視される理由

ここでよくある誤解が、
「国や自治体が所有していないと営造物にならない」
という考え方です。

しかし、国家賠償法2条で本質的に重要なのは管理責任です。
実際の試験や判例では、

  • 所有は民間
  • 管理は自治体

というケースでも、営造物性が肯定される場面があります。

つまり、「誰の物か」より
「誰が安全を確保すべき立場か」
が判断基準になります。

具体例(ここは確実に押さえる)

代表的な公の営造物は次のとおりです。

  • 道路、橋、トンネル
  • 河川、堤防
  • 公園、遊歩道
  • 公立学校の校舎や体育館
  • 公営住宅

これらに共通するのは、
一般人が自由に利用し、危険を回避しにくい
という点です。

この性質が、2条の責任を重くしている理由につながります。


3. 設置・管理の欠陥とは何を指すのか

国家賠償法2条でもっとも抽象的で、かつ出題されやすいのが
**「設置または管理の欠陥」**です。

欠陥=壊れている、ではない

まず否定しておきたいのが、
「壊れていれば欠陥、壊れていなければセーフ」
という発想です。

欠陥とは、次のように理解します。

当該営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態

ここでの「通常」とは、

  • 最新技術
  • 絶対的な安全

ではありません。

判断基準は「社会通念」

欠陥の有無は、

  • 利用目的
  • 利用者の範囲
  • 利用状況
  • 周辺環境

などを総合して、社会通念上どうかで判断されます。

たとえば、

  • 車道に大きな陥没がある
  • 夜間でも人が通行するのに照明がない
  • 遊具に明らかな危険構造がある

といった場合、欠陥が肯定されやすくなります。

自然現象との関係

行政書士試験でよく問われるのが、
「自然災害が原因の場合はどうなるのか」
という点です。

ここでの整理は次のとおりです。

  • 異常・予測不能な自然現象のみが原因
    → 欠陥否定の方向
  • 予測可能な自然現象への対策不足
    → 欠陥肯定の可能性

つまり、自然現象そのものではなく、
それに対する備えの有無が評価されます。

4. 国家賠償法1条との本質的な違い

国家賠償法2条が理解しにくい最大の理由は、1条の発想を引きずったまま読んでしまう点にあります。
ここでは、両者の違いを表面的ではなく、思考の出発点レベルで整理します。

1条は「行為責任」、2条は「状態責任」

まず、責任の性質が違います。

  • 1条:公務員の違法な職務行為による責任
  • 2条:営造物が危険な状態にあること自体による責任

1条では、「誰が」「何を」「どう間違えたか」を問題にします。
一方で2条では、その問い自体が立ちません

問われるのは、
「その営造物は、通常期待される安全性を備えていたか」
ただそれだけです。

公務員が関与していても2条になる理由

ここが試験で最も引っかかりやすいポイントです。

たとえば、

  • 市の職員が道路点検を怠った
  • 結果として道路に危険な陥没が放置された

この事案を見たとき、
「職員の怠慢=1条では?」
と考えてしまいがちです。

しかし、損害の直接原因は
道路という営造物の危険な状態です。

この場合、

  • 職員の過失 → 評価しない
  • 道路の欠陥 → 評価する

という切り分けが行われ、2条が適用されることになります。

両条の使い分けを誤る思考パターン

誤りやすい思考は次のとおりです。

  • 人が関与している → 1条
  • 物が関与している → 2条

これは不正確です。

正しくは、

  • 損害の原因が「行為」か「状態」か
    で判断します。

この視点を持てるかどうかで、
国家賠償法の得点は大きく変わります。


5. 過失不要とされる理由の理論背景

国家賠償法2条では、過失の立証が不要とされています。
これは単なる条文上のテクニックではなく、明確な理由があります。

危険支配の考え方

2条の根底にあるのは、
危険を支配・管理している者が責任を負うべきだ
という考え方です。

営造物については、

  • 設置するかどうかを決めたのも
  • どの程度の安全対策を取るか決めたのも
  • 維持管理を行っているのも

すべて国または公共団体です。

一方、一般利用者は

  • 危険を事前に把握できず
  • 回避行動も取りにくい

この不均衡を是正するため、
過失の有無を問わず責任を認める構造が採られています。

被害者救済の観点

もう一つ重要なのが、被害者救済です。

もし2条でも過失立証を要求すると、

  • 管理体制の内部事情
  • 点検記録
  • 担当者の注意義務

といった、被害者が知り得ない情報を
被害者側が立証しなければならなくなります。

これは現実的ではありません。

そこで、
欠陥という外形的な事実があれば足りる
というルールが採用されています。

無過失責任と誤解しないこと

ここで注意すべきなのは、
2条は「完全な無過失責任」ではない、という点です。

  • 欠陥がなければ責任は生じない
  • すべての事故で自動的に賠償されるわけではない

あくまで、
通常有すべき安全性を欠いていたか
というフィルターが存在します。


6. 責任主体と求償関係の整理

最後に、2条の責任構造を整理します。
ここは条文を正確に読めば整理できる部分です。

原則的な責任主体

国家賠償法2条における賠償責任者は、

  • 公共団体

です。

営造物の設置者または管理者が、
直接被害者に対して賠償責任を負います。

管理者・設置者が別にいる場合

条文では、
「国又は公共団体は、損害を賠償したときは、
当該営造物の設置又は管理をした者に求償することができる」
とされています。

ここで重要なのは、

  • 被害者 → 国・公共団体に請求
  • 国・公共団体 → 内部的に求償

という二段構造です。

被害者が、
「誰が管理していたか」
を細かく特定する必要はありません。

試験で問われるポイント

行政書士試験では、

  • 責任主体を誤らせる選択肢
  • 求償関係を混同させる選択肢

が頻出です。

特に、

  • 被害者が直接管理委託業者に請求できる
  • 管理者が直接賠償責任を負う

といった記述は、原則として誤りになります。

7. 判例から理解する国家賠償法2条

国家賠償法2条は、条文だけ読んでも抽象的です。
ここでは、判例が何を基準に欠陥を判断しているかという視点で整理します。
※具体的な判例名の暗記は不要。考え方を掴むのが目的です。

判例が一貫して見ているポイント

判例の思考枠組みは、ほぼ次の順序です。

  1. 当該営造物の性質・目的は何か
  2. 想定される利用者は誰か
  3. その利用者にとって、通常期待される安全性はどの程度か
  4. それが確保されていたか

つまり、「事故が起きたかどうか」ではなく、
事故前の状態が評価対象になります。

危険が予見できたかどうか

判例ではしばしば、
「その危険は予見可能だったか」
という点が考慮されます。

ここで注意すべきなのは、
予見主体は利用者ではないという点です。

  • 利用者が注意すれば避けられたか
    ではなく
  • 管理者側が危険を予測できたか

が問題になります。

利用者の不注意がある場合

「被害者にも不注意がある場合はどうなるのか」
これは非常によく問われます。

結論から言うと、

  • 欠陥の有無 → 影響しない
  • 損害額の調整 → 過失相殺で処理

という整理になります。

つまり、
被害者が少し不注意でも、欠陥があれば2条は成立する
ということです。


8. 1条と2条が問題になる典型パターン

ここでは、行政書士試験で頻出の「迷わせ方」を整理します。

パターン① 人の行為+物の危険状態

もっとも典型的なのがこの形です。

  • 職員の点検ミス
  • 危険箇所の放置
  • 事故発生

この場合、
損害の直接原因がどこにあるかを見ます。

  • 危険な状態そのもの → 2条
  • 違法な職務行為そのもの → 1条

多くの問題では、
「結果として営造物が危険な状態になっている」
ため、2条が選ばれます。

パターン② 管理行為と利用者行為の競合

たとえば、

  • 管理が不十分
  • かつ利用者も不注意

というケース。

この場合も、

  • 責任の成立 → 2条
  • 損害調整 → 過失相殺

という二段階処理になります。

パターン③ 異常自然現象が絡む場合

自然現象が絡む問題は、必ず出題されます。

  • 異常・不可抗力レベル
    → 欠陥否定の方向
  • 予測可能・対策可能
    → 欠陥肯定の可能性

この切り分けができるかが、正誤判断の分かれ目です。


9. 行政書士試験での出題傾向と対策

最後に、試験対策としての整理をします。

出題形式の特徴

行政書士試験では、

  • 正誤問題
  • 条文理解型
  • 事例型

いずれの形式でも出題されます。

特に多いのは、
1条と2条の混同を狙った選択肢です。

典型的な誤り選択肢

次のような記述は、原則として誤りです。

  • 公務員の過失があるため1条が適用される
  • 管理者個人が直接賠償責任を負う
  • 被害者は過失を立証しなければならない

これらはすべて、
2条の構造を正しく理解していれば切れる選択肢です。

点を取るための整理法

問題文を読んだら、次の順で考えます。

  1. 原因は行為か、状態か
  2. 状態なら営造物か
  3. 通常の安全性を欠いていないか

この順番を崩さないことが、最大の対策です。

10. 迷わないための思考手順(チェックリスト化)

国家賠償法2条で点を落とす原因は、知識不足ではありません。
問題文を読んだ瞬間に、考える順番を間違えることです。

そこで、本試験用に思考を固定するチェックリストを用意します。
これを頭の中でなぞるだけで、1条・2条の迷いはほぼ消えます。


ステップ① 損害の直接原因は何か

まず最初にやることはこれです。

  • 公務員の行為そのものか
  • 物の危険な状態そのものか

ここで「人が関与しているかどうか」は見ません。
結果を生んだ原因の正体だけを見る。

  • 行為が原因 → 1条の土俵
  • 状態が原因 → 2条の土俵

この切り分けを最初に行います。


ステップ② その「状態」は公の営造物か

次に確認するのは、

  • 国・公共団体が
  • 公共目的のために
  • 設置または管理しているか

この3点です。

ここで
「所有者が誰か」
「委託先が民間か」
といった情報に引っ張られないこと。

管理責任の所在だけを見ます。


ステップ③ 通常有すべき安全性を欠いているか

最後に、欠陥の有無を判断します。

このときの視点は、

  • 想定利用者は誰か
  • 利用状況はどうか
  • 社会通念上、危険といえるか

です。

  • 事故が起きた → 欠陥
    ではありません。

事故前の状態を評価する
これができるかどうかが合否を分けます。


ステップ④ 利用者の不注意はどう扱うか

ここで初めて、

  • 被害者にも落ち度がある

という事情を考えます。

ただし、これは
責任の成立ではなく、損害額の調整
の話です。

  • 欠陥がある → 2条成立
  • 不注意がある → 過失相殺

この順序を絶対に逆にしない。


チェックリストの完成形

本試験では、次の順で処理します。

  1. 原因は行為か状態か
  2. 状態なら営造物か
  3. 通常の安全性を欠くか
  4. 不注意は過失相殺で処理

これを機械的に当てはめる
感覚や雰囲気で判断しない。


11. まとめ+学習アドバイス

最後に、この記事全体を一気に整理します。

国家賠償法2条の本質

  • 2条は「人」ではなく「物」に着目する
  • 過失は問わない
  • 問題になるのは危険な状態の有無
  • 責任主体は国または公共団体

この4点が、2条の骨格です。


1条と2条で迷わなくなる視点

  • 人が関与しているか → 見ない
  • 誰が悪いか → 見ない
  • 危険な状態があったか → 見る

この視点に切り替えるだけで、
国家賠償法は一気に整理されます。


行政書士試験向けの学習アドバイス

国家賠償法2条は、

  • 出題頻度は高くない
  • しかし出たら差がつく

という論点です。

条文暗記や判例名暗記よりも、

  • なぜ過失不要なのか
  • なぜ責任主体が国なのか

説明できる状態にすることが重要です。

過去問を解くときも、

  • 正解肢がなぜ正しいか
  • 誤り肢がどこでズレているか

を、必ず言語化してください。

国家賠償法は、毎年必ず出題されます(1~2問)が、個人的には落とすのはもったいない部分です。
行政法の中では終わりの方で学習すると思いますが、ここを落とすわけにはいきません。
過去問を繰り返しやって、条文と判例を理解してしまえば、そうそう事故ることはなくなりますよ。


CTA(行動につなげる)

もし今、

  • 国家賠償法が苦手
  • 行政法全体がごちゃついている

と感じているなら、
1条・2条・損失補償を横断して整理する
のがおすすめです。

国家賠償法2条が腑に落ちると、
行政法の「責任構造」が一本につながります。

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