行政書士試験|国家賠償法1条を基礎から整理【判例で理解する成立要件】
はじめに
行政書士試験の行政法で、毎年のように出題されるテーマ。
それが「国家賠償法1条」です。
条文は短く、言葉も難しくありません。
それにもかかわらず、
- 要件がごちゃごちゃになる
- 判例問題になると選択肢が読めない
- 民法709条との関係で混乱する
こうした理由で、点を落とす受験生が非常に多い分野です。
この記事では、国家賠償法1条を
「条文 → 要件 → 試験で狙われる視点」
の順で整理します。
暗記ではなく、理解で処理できる状態を目指します。
この記事はこんな人向け
- 国家賠償法1条を丸暗記している
- 判例が出ると正解できない
- 行政法で安定して点が取れない
- 「何となく分かった気がする」状態から抜け出したい
Contents
- 1 はじめに
- 2 この記事はこんな人向け
- 3 国家賠償法1条とは何か
- 4 国家賠償法1条の成立要件
- 5 民法709条との関係(試験超頻出)
- 6 ここが試験で狙われるポイント
- 7 ここまでのまとめ
- 8 「公権力の行使」とは何か
- 9 行政処分の場合
- 10 行政指導の場合
- 11 不作為の場合
- 12 よくある誤解
- 13 ここまでのまとめ
- 14 国家賠償法1条における「違法性」
- 15 違法性の本質
- 16 行政裁量と違法性
- 17 判例が使う判断枠組み
- 18 不作為と違法性(再整理)
- 19 国家賠償法と取消訴訟の違法性の違い
- 20 よくある誤り
- 21 ここまでのまとめ
- 22 故意・過失の判断
- 23 因果関係
- 24 公務員個人の責任(求償)
- 25 国家賠償法1条の全体像(最終整理)
- 26 行政書士試験での考え方テンプレ
- 27 記事全体のまとめ
- 28 CTA(行動につなげる)
国家賠償法1条とは何か
まずは条文を確認します。
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、
その職務を行うについて、故意又は過失によって
違法に他人に損害を加えたときは、
国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる。
行政書士試験では、
👉 この条文をどこまで分解して理解できているか
が、そのまま得点差になります。
国家賠償法1条の成立要件
条文から導かれる成立要件は、次の5つです。
① 公権力の行使に当たる公務員
- 国家公務員・地方公務員が対象
- 「公権力の行使」に該当するかが頻出論点
たとえば、
- 行政処分:原則として該当
- 単なる事実行為:問題になることがある
※ここは後の回で、判例を使って詳しく整理します。
② 職務を行うについて
- 職務行為そのもの
- 職務と密接に関連する行為も含まれる
完全な私的行為は、原則として含まれません。
③ 故意または過失
- 故意:結果を認識しながら行為すること
- 過失:注意義務を怠ったこと
試験では、
👉 結果を予見できたか
👉 注意義務違反があったか
という視点で問われます。
④ 違法性
国家賠償法1条で、最も重要な要件です。
ここで注意すべきなのは、
- 「結果が不都合だった」だけでは足りない
- 職務上の法的義務に違反している必要がある
という点です。
この違法性の判断基準は、
👉 ほぼすべて判例で形づくられています。
⑤ 損害の発生
- 財産的損害
- 精神的損害(慰謝料)
民法と同様、実際に損害が発生していることが必要です。
民法709条との関係(試験超頻出)
国家賠償法1条と民法709条は、行政書士試験ではセットで出題されます。
違いは、次のポイントで整理します。
責任主体の違い
- 国家賠償法1条
→ 国または公共団体が責任を負う - 民法709条
→ 行為をした本人が責任を負う
行為者の違い
- 国家賠償法1条
→ 公権力の行使に当たる公務員 - 民法709条
→ 一般人(私人)
法律上の位置づけ
- 国家賠償法1条
→ 特別法 - 民法709条
→ 一般法
👉 公務員の職務行為による損害については、国家賠償法1条が優先適用されます。
ここが試験で狙われるポイント
- 国家賠償法があるのに、民法709条を直接適用する選択肢
- 被害者は「公務員個人にしか請求できない」とする記述
これらは、典型的な誤りとして頻出です。
ここまでのまとめ
- 国家賠償法1条は要件分解が最重要
- 特に
- 公権力性
- 違法性
- 民法709条との関係
が得点差になる
- 判例は「結論」より「理由づけ」を読む
「公権力の行使」とは何か
国家賠償法1条が適用されるためには、
公務員の行為が 「公権力の行使」 に当たる必要があります。
公権力の行使とは
一般に、次のように説明されます。
- 国や公共団体が
- 法令に基づき
- 国民に対して一方的に
- 権利義務に影響を及ぼす行為
典型例は、行政処分です。
行政処分の場合
原則
行政処分は、
👉 公権力の行使に該当します。
そのため、
- 違法な許可取消し
- 違法な課税処分
などによって損害が生じた場合、
国家賠償法1条の適用が問題になります。
試験での注意点
行政書士試験では、
- 「処分だから必ず賠償される」
- 「違法な処分=直ちに国家賠償責任」
と短絡的に結びつける選択肢が出されます。
しかし実際には、
👉 違法性・過失・因果関係
を個別に判断する必要があります。
行政指導の場合
原則:公権力の行使に当たらない
行政指導は、
- 相手方の任意の協力を前提とする
- 法的強制力を持たない
という性質から、
原則として公権力の行使には当たりません。
それでも問題になる理由
行政書士試験では、
ここで必ず例外的な事案が問われます。
- 行政指導が事実上強制的だった場合
- 相手方が従わざるを得ない状況に追い込まれた場合
このようなケースでは、
👉 公権力性が肯定される余地があります。
代表的な考え方(判例ベース)
判例は、
- 形式ではなく
- 実質的に
- 相手方の自由な意思があったか
という視点で判断します。
つまり、
- 表向きは行政指導
- 実態は拒否できない
このような場合、
国家賠償法1条の適用が否定されないことがあります。
不作為の場合
次に、不作為(何もしなかった場合)です。
問題になる場面
- 規制権限を行使しなかった
- 危険を予見できたのに措置を取らなかった
こうしたケースで、
「何もしなかったこと」が違法になるかが問われます。
判例の基本的な考え方
不作為については、
- 行政庁に
- 特定の作為義務があったか
が判断の出発点になります。
単に、
- 権限があった
- できたはず
というだけでは足りません。
試験でよく出る整理
- 法令上、明確な作為義務がある
- 危険が具体的・切迫している
- 結果を回避できた可能性が高い
このような事情が重なると、
👉 不作為の違法性が認められやすくなります。
よくある誤解
❌ 行政指導は絶対に国家賠償の対象にならない
→ 誤り(実質で判断)
❌ 不作為は公権力の行使ではないから無関係
→ 誤り(作為義務があれば問題になる)
ここまでのまとめ
- 行政処分:原則として公権力の行使
- 行政指導:原則否定、ただし実質判断
- 不作為:作為義務の有無がカギ
- 形式ではなく、実態を見る
国家賠償法1条における「違法性」
まず大前提です。
国家賠償法1条における違法性は、
単なる結果の不都合さを意味しません。
よくある勘違い
- 被害が大きい
- 結果がかわいそう
- 行政の対応が冷たい
これらだけでは、違法とは評価されません。
違法性の本質
判例は、違法性を次のように捉えています。
👉 公務員が、職務上負っている法的義務に違反したか
ここが判断の中心です。
つまり、
- 何をすべき義務があったのか
- それを怠ったのか
この2点を具体的に検討します。
行政裁量と違法性
違法性を考える上で、
行政裁量の有無は避けて通れません。
行政裁量がある場合
行政庁に裁量が認められている場合、
- 判断が分かれ得る
- 結果が一つに定まらない
このような性質があります。
そのため、
👉 裁量の範囲内であれば、直ちに違法とはならない
というのが判例の立場です。
裁量逸脱・濫用
一方で、
- 判断過程が不合理
- 考慮すべき事情を無視
- 明らかに社会通念を欠く
このような場合には、
👉 裁量の逸脱・濫用として違法と評価されます。
判例が使う判断枠組み
行政書士試験では、
次の思考手順をそのまま選択肢に落とし込んでくる
ことがよくあります。
違法性判断の流れ
- 公務員にどのような職務上の義務があったか
- その義務の内容はどこまでか
- 具体的事案で義務違反があったか
この順番で考えると、
選択肢の誤りが見えやすくなります。
不作為と違法性(再整理)
第2回で触れた不作為について、
違法性の視点から整理します。
不作為が違法になる条件
判例は、次の点を重視します。
- 作為義務が法令上明確にあるか
- 危険が具体的・切迫していたか
- 結果回避が可能だったか
これらが揃わない限り、
👉 不作為は違法とされにくいのが実情です。
国家賠償法と取消訴訟の違法性の違い
ここは試験で混乱しやすいポイントです。
取消訴訟の場合
- 処分が違法であれば取消される
- 違法性のハードルは比較的低い
国家賠償法の場合
- 違法性に加え
- 過失
- 因果関係
が必要になります。
👉 処分が取り消された=国家賠償が成立する
とは限りません。
よくある誤り
❌ 処分が違法なら、必ず国家賠償責任が生じる
→ 誤り(別途要件が必要)
❌ 裁量がある行為は一切違法にならない
→ 誤り(逸脱・濫用があれば違法)
ここまでのまとめ
- 違法性は「結果」ではなく「義務違反」
- 行政裁量がある場合は、逸脱・濫用がポイント
- 不作為は作為義務の有無がカギ
- 取消訴訟と国家賠償は別物
故意・過失の判断
国家賠償法1条では、
公務員に故意または過失があることが必要です。
故意とは
- 結果の発生を認識しながら
- あえて行為すること
行政実務では、
👉 故意が問題になるケースは多くありません。
過失とは
試験で重要なのは、過失です。
過失とは、
- 結果を予見できたのに
- 注意義務を怠ったこと
と説明されます。
判例の視点
判例は、過失の有無を判断する際、
- 当時の状況
- 公務員の立場・権限
- 通常要求される注意義務
を総合的に考慮します。
👉 結果論では判断しない
という点が重要です。
因果関係
国家賠償法1条では、
- 違法な行為
- 損害
の間に、因果関係が必要です。
因果関係が否定される例
- 別の原因でも同じ結果が生じた
- 行政の行為と損害が間接的すぎる
このような場合、
👉 国家賠償責任は否定されやすくなります。
試験でのポイント
行政書士試験では、
- 「違法行為があれば当然に因果関係がある」
- 「損害が出た以上、因果関係はある」
とする選択肢が出ますが、誤りです。
公務員個人の責任(求償)
ここは、ひっかけポイントとして非常に重要です。
被害者との関係
- 被害者は
→ 原則として 国または公共団体に請求
公務員個人に、
直接請求できるわけではありません。
国・公共団体と公務員の関係
国や公共団体が賠償した後、
- 公務員に
- 故意または重過失があった場合
👉 国や公共団体は、公務員に求償することができます。
試験での典型パターン
❌ 公務員は一切責任を負わない
❌ 被害者は必ず公務員個人に請求する
→ いずれも誤りです。
国家賠償法1条の全体像(最終整理)
ここまでの内容を、試験用に一気に整理します。
成立要件(再確認)
- 公権力の行使に当たる公務員
- 職務を行うについて
- 故意または過失
- 違法性(職務上の法的義務違反)
- 損害の発生
- 因果関係
👉 どれか1つ欠けても成立しません。
行政書士試験での考え方テンプレ
問題文を読んだら、次の順で考えます。
- 行為は公権力の行使か
- 職務行為といえるか
- 違法性はあるか
- 過失は認められるか
- 因果関係はあるか
この順番で処理できると、
👉 正誤判断が安定します。
記事全体のまとめ
- 国家賠償法1条は行政書士試験の超重要分野
- 条文暗記だけでは対応できない
- 判例の考え方を理解すると、一気に整理できる
- 要件分解 → 判断順序を身につけることが重要
CTA(行動につなげる)
もし、
- 行政法が苦手
- 判例問題が不安
- 得点が安定しない
と感じているなら、
国家賠償法1条を「理解」で処理できるようにすることが、
合格への近道になります。
この記事が、
その一助になれば幸いです。
むらた事務所


