行政書士試験|国家賠償法1条を基礎から整理【判例で理解する成立要件】

はじめに

行政書士試験の行政法で、毎年のように出題されるテーマ
それが「国家賠償法1条」です。

条文は短く、言葉も難しくありません。
それにもかかわらず、

  • 要件がごちゃごちゃになる
  • 判例問題になると選択肢が読めない
  • 民法709条との関係で混乱する

こうした理由で、点を落とす受験生が非常に多い分野です。

この記事では、国家賠償法1条を
「条文 → 要件 → 試験で狙われる視点」
の順で整理します。

暗記ではなく、理解で処理できる状態を目指します。


この記事はこんな人向け

  • 国家賠償法1条を丸暗記している
  • 判例が出ると正解できない
  • 行政法で安定して点が取れない
  • 「何となく分かった気がする」状態から抜け出したい

Contents


国家賠償法1条とは何か

まずは条文を確認します。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、
その職務を行うについて、故意又は過失によって
違法に他人に損害を加えたときは、
国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる。

行政書士試験では、
👉 この条文をどこまで分解して理解できているか
が、そのまま得点差になります。


国家賠償法1条の成立要件

条文から導かれる成立要件は、次の5つです。

① 公権力の行使に当たる公務員

  • 国家公務員・地方公務員が対象
  • 「公権力の行使」に該当するかが頻出論点

たとえば、

  • 行政処分:原則として該当
  • 単なる事実行為:問題になることがある

※ここは後の回で、判例を使って詳しく整理します。


② 職務を行うについて

  • 職務行為そのもの
  • 職務と密接に関連する行為も含まれる

完全な私的行為は、原則として含まれません。


③ 故意または過失

  • 故意:結果を認識しながら行為すること
  • 過失:注意義務を怠ったこと

試験では、
👉 結果を予見できたか
👉 注意義務違反があったか
という視点で問われます。


④ 違法性

国家賠償法1条で、最も重要な要件です。

ここで注意すべきなのは、

  • 「結果が不都合だった」だけでは足りない
  • 職務上の法的義務に違反している必要がある

という点です。

この違法性の判断基準は、
👉 ほぼすべて判例で形づくられています。


⑤ 損害の発生

  • 財産的損害
  • 精神的損害(慰謝料)

民法と同様、実際に損害が発生していることが必要です。


民法709条との関係(試験超頻出)

国家賠償法1条と民法709条は、行政書士試験ではセットで出題されます。

違いは、次のポイントで整理します。

責任主体の違い

  • 国家賠償法1条
     → 国または公共団体が責任を負う
  • 民法709条
     → 行為をした本人が責任を負う

行為者の違い

  • 国家賠償法1条
     → 公権力の行使に当たる公務員
  • 民法709条
     → 一般人(私人)

法律上の位置づけ

  • 国家賠償法1条
     → 特別法
  • 民法709条
     → 一般法

👉 公務員の職務行為による損害については、国家賠償法1条が優先適用されます。


ここが試験で狙われるポイント

  • 国家賠償法があるのに、民法709条を直接適用する選択肢
  • 被害者は「公務員個人にしか請求できない」とする記述

これらは、典型的な誤りとして頻出です。


ここまでのまとめ

  • 国家賠償法1条は要件分解が最重要
  • 特に
    • 公権力性
    • 違法性
    • 民法709条との関係
      が得点差になる
  • 判例は「結論」より「理由づけ」を読む

「公権力の行使」とは何か

国家賠償法1条が適用されるためには、
公務員の行為が 「公権力の行使」 に当たる必要があります。

公権力の行使とは

一般に、次のように説明されます。

  • 国や公共団体が
  • 法令に基づき
  • 国民に対して一方的に
  • 権利義務に影響を及ぼす行為

典型例は、行政処分です。


行政処分の場合

原則

行政処分は、
👉 公権力の行使に該当します。

そのため、

  • 違法な許可取消し
  • 違法な課税処分

などによって損害が生じた場合、
国家賠償法1条の適用が問題になります。


試験での注意点

行政書士試験では、

  • 「処分だから必ず賠償される」
  • 「違法な処分=直ちに国家賠償責任」

と短絡的に結びつける選択肢が出されます。

しかし実際には、
👉 違法性・過失・因果関係
を個別に判断する必要があります。


行政指導の場合

原則:公権力の行使に当たらない

行政指導は、

  • 相手方の任意の協力を前提とする
  • 法的強制力を持たない

という性質から、
原則として公権力の行使には当たりません。


それでも問題になる理由

行政書士試験では、
ここで必ず例外的な事案が問われます。

  • 行政指導が事実上強制的だった場合
  • 相手方が従わざるを得ない状況に追い込まれた場合

このようなケースでは、
👉 公権力性が肯定される余地があります。


代表的な考え方(判例ベース)

判例は、

  • 形式ではなく
  • 実質的に
  • 相手方の自由な意思があったか

という視点で判断します。

つまり、

  • 表向きは行政指導
  • 実態は拒否できない

このような場合、
国家賠償法1条の適用が否定されないことがあります。


不作為の場合

次に、不作為(何もしなかった場合)です。

問題になる場面

  • 規制権限を行使しなかった
  • 危険を予見できたのに措置を取らなかった

こうしたケースで、
「何もしなかったこと」が違法になるかが問われます。


判例の基本的な考え方

不作為については、

  • 行政庁に
  • 特定の作為義務があったか

が判断の出発点になります。

単に、

  • 権限があった
  • できたはず

というだけでは足りません。


試験でよく出る整理

  • 法令上、明確な作為義務がある
  • 危険が具体的・切迫している
  • 結果を回避できた可能性が高い

このような事情が重なると、
👉 不作為の違法性が認められやすくなります。


よくある誤解

❌ 行政指導は絶対に国家賠償の対象にならない
→ 誤り(実質で判断)

❌ 不作為は公権力の行使ではないから無関係
→ 誤り(作為義務があれば問題になる)


ここまでのまとめ

  • 行政処分:原則として公権力の行使
  • 行政指導:原則否定、ただし実質判断
  • 不作為:作為義務の有無がカギ
  • 形式ではなく、実態を見る

国家賠償法1条における「違法性」

まず大前提です。

国家賠償法1条における違法性は、
単なる結果の不都合さを意味しません。

よくある勘違い

  • 被害が大きい
  • 結果がかわいそう
  • 行政の対応が冷たい

これらだけでは、違法とは評価されません。


違法性の本質

判例は、違法性を次のように捉えています。

👉 公務員が、職務上負っている法的義務に違反したか

ここが判断の中心です。

つまり、

  • 何をすべき義務があったのか
  • それを怠ったのか

この2点を具体的に検討します。


行政裁量と違法性

違法性を考える上で、
行政裁量の有無は避けて通れません。

行政裁量がある場合

行政庁に裁量が認められている場合、

  • 判断が分かれ得る
  • 結果が一つに定まらない

このような性質があります。

そのため、

👉 裁量の範囲内であれば、直ちに違法とはならない

というのが判例の立場です。


裁量逸脱・濫用

一方で、

  • 判断過程が不合理
  • 考慮すべき事情を無視
  • 明らかに社会通念を欠く

このような場合には、
👉 裁量の逸脱・濫用として違法と評価されます。


判例が使う判断枠組み

行政書士試験では、
次の思考手順をそのまま選択肢に落とし込んでくる
ことがよくあります。

違法性判断の流れ

  1. 公務員にどのような職務上の義務があったか
  2. その義務の内容はどこまでか
  3. 具体的事案で義務違反があったか

この順番で考えると、
選択肢の誤りが見えやすくなります。


不作為と違法性(再整理)

第2回で触れた不作為について、
違法性の視点から整理します。

不作為が違法になる条件

判例は、次の点を重視します。

  • 作為義務が法令上明確にあるか
  • 危険が具体的・切迫していたか
  • 結果回避が可能だったか

これらが揃わない限り、
👉 不作為は違法とされにくいのが実情です。


国家賠償法と取消訴訟の違法性の違い

ここは試験で混乱しやすいポイントです。

取消訴訟の場合

  • 処分が違法であれば取消される
  • 違法性のハードルは比較的低い

国家賠償法の場合

  • 違法性に加え
  • 過失
  • 因果関係

が必要になります。

👉 処分が取り消された=国家賠償が成立する
とは限りません。


よくある誤り

❌ 処分が違法なら、必ず国家賠償責任が生じる
→ 誤り(別途要件が必要)

❌ 裁量がある行為は一切違法にならない
→ 誤り(逸脱・濫用があれば違法)


ここまでのまとめ

  • 違法性は「結果」ではなく「義務違反」
  • 行政裁量がある場合は、逸脱・濫用がポイント
  • 不作為は作為義務の有無がカギ
  • 取消訴訟と国家賠償は別物

故意・過失の判断

国家賠償法1条では、
公務員に故意または過失があることが必要です。

故意とは

  • 結果の発生を認識しながら
  • あえて行為すること

行政実務では、
👉 故意が問題になるケースは多くありません。


過失とは

試験で重要なのは、過失です。

過失とは、

  • 結果を予見できたのに
  • 注意義務を怠ったこと

と説明されます。


判例の視点

判例は、過失の有無を判断する際、

  • 当時の状況
  • 公務員の立場・権限
  • 通常要求される注意義務

を総合的に考慮します。

👉 結果論では判断しない
という点が重要です。


因果関係

国家賠償法1条では、

  • 違法な行為
  • 損害

の間に、因果関係が必要です。

因果関係が否定される例

  • 別の原因でも同じ結果が生じた
  • 行政の行為と損害が間接的すぎる

このような場合、
👉 国家賠償責任は否定されやすくなります。


試験でのポイント

行政書士試験では、

  • 「違法行為があれば当然に因果関係がある」
  • 「損害が出た以上、因果関係はある」

とする選択肢が出ますが、誤りです。


公務員個人の責任(求償)

ここは、ひっかけポイントとして非常に重要です。

被害者との関係

  • 被害者は
     → 原則として 国または公共団体に請求

公務員個人に、
直接請求できるわけではありません。


国・公共団体と公務員の関係

国や公共団体が賠償した後、

  • 公務員に
  • 故意または重過失があった場合

👉 国や公共団体は、公務員に求償することができます。


試験での典型パターン

❌ 公務員は一切責任を負わない
❌ 被害者は必ず公務員個人に請求する

→ いずれも誤りです。


国家賠償法1条の全体像(最終整理)

ここまでの内容を、試験用に一気に整理します。

成立要件(再確認)

  1. 公権力の行使に当たる公務員
  2. 職務を行うについて
  3. 故意または過失
  4. 違法性(職務上の法的義務違反)
  5. 損害の発生
  6. 因果関係

👉 どれか1つ欠けても成立しません。


行政書士試験での考え方テンプレ

問題文を読んだら、次の順で考えます。

  1. 行為は公権力の行使か
  2. 職務行為といえるか
  3. 違法性はあるか
  4. 過失は認められるか
  5. 因果関係はあるか

この順番で処理できると、
👉 正誤判断が安定します。



記事全体のまとめ

  • 国家賠償法1条は行政書士試験の超重要分野
  • 条文暗記だけでは対応できない
  • 判例の考え方を理解すると、一気に整理できる
  • 要件分解 → 判断順序を身につけることが重要

CTA(行動につなげる)

もし、

  • 行政法が苦手
  • 判例問題が不安
  • 得点が安定しない

と感じているなら、
国家賠償法1条を「理解」で処理できるようにすることが、
合格への近道になります。

この記事が、
その一助になれば幸いです。
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