行政書士試験|取消訴訟の「訴えの利益」とは?判例と具体例で完全整理
はじめに
行政書士試験の行政法で、得点差がつきやすい論点の一つが「取消訴訟の訴えの利益」です。
テキストでは短い説明で済まされがちですが、過去問では「それ、取消して何が変わるの?」という発想を使って、選択肢の正誤を判断させてきます。
この記事では、取消訴訟における訴えの利益を、定義→理由→原則→例外→試験での判断手順、の順に整理します。暗記だけで終わらず、問題文を読んだ瞬間に頭が動く状態を目指します。
この記事はこんな人向け
- 行政書士試験の行政法がいつも同じところでつまずく
- 「訴えの利益」と「原告適格」が混ざってしまう
- 期間満了・失効・代替処分が出ると判断が止まる
- 過去問の解説を読んでも腑に落ちない
Contents
- 1 はじめに
- 2 この記事はこんな人向け
- 3 取消訴訟の前提:何をするための訴訟か
- 4 訴えの利益とは何か(試験で使える定義)
- 5 原告適格との違い(混同しやすいので先に分ける)
- 6 なぜ取消訴訟で訴えの利益が問題になるのか
- 7 原則:訴えの利益が否定されやすい場面
- 8 期間満了(最頻出)
- 9 失効・消滅
- 10 代替処分(新しい処分が出ているケース)
- 11 ありがちな誤読:抽象的な不利益の主張
- 12 例外:訴えの利益が残る(残りやすい)場面
- 13 将来の不利益を回避できる(前歴効果がある)
- 14 旧処分の取消しに独立した意味が残る(代替処分があっても)
- 15 国家賠償請求との関係(試験での扱い)
- 16 例外の見抜き方:具体性チェック
- 17 試験で迷わないための判断手順
- 18 ひっかけ表現への対処
- 19 ミスが起きる典型シーン(受験生あるあるの分解)
- 20 直前期の覚え方(短いフレーズ)
- 21 まとめ
- 22 CTA(やることが明確な締め)
取消訴訟の前提:何をするための訴訟か
取消訴訟は、行政庁の「処分」の取消しを求める訴訟です。ポイントは、目的が「違法の宣言」ではなく、処分の法的効力を取り除くことにある点です。
たとえば営業停止処分が違法だとしても、取消判決で得たいのは「違法と認められた満足」ではなく、営業停止の効力が消え、営業できる状態が回復することです。
このように、取消訴訟は「取消すことで現実が変わる」ことを予定している訴訟だと捉えると、訴えの利益の考え方が一気に整理できます。
訴えの利益とは何か(試験で使える定義)
試験で使いやすい形にすると、訴えの利益は次のように言えます。
「取消判決を得ることにより、原告の権利または法律上の地位が、現実に回復または改善される利益」
ここで重要なのは3点です。
- 現実に回復・改善されること(抽象的では足りない)
- 法律上の地位であること(気分・名誉だけでは足りない)
- 判決により変化が生じること(取消しても何も変わらないなら足りない)
この3点を、過去問のあらゆる場面で当てはめます。
原告適格との違い(混同しやすいので先に分ける)
- 原告適格:その人が「訴える資格」を持つか(誰が訴えられるか)
- 訴えの利益:今この訴訟をして「意味があるか」(訴訟をする価値が残っているか)
同じ「利益」という言葉が出ますが、見ている角度が違います。
原告適格は「当事者としての立場」、訴えの利益は「勝ったとき現実に何が変わるか」です。
なぜ取消訴訟で訴えの利益が問題になるのか
取消訴訟は、処分の効力を取り除くという性質上、処分の効力がすでに消えている場合には、取消しても状況が変わらないことがあります。
その場合まで一律に取消訴訟を認めると、終わった処分について延々と争いが続き、行政活動も不安定になります。そこで「取消して意味がある場合に限る」というフィルターとして、訴えの利益が機能します。
原則:訴えの利益が否定されやすい場面
取消訴訟では、次の場面で「取消しても意味がないのでは?」が問題になります。試験ではまずここを確実に押さえます。
期間満了(最頻出)
例:3か月の営業停止処分を受けたが、提訴時点で3か月がすでに経過している。
この場合、営業停止の効力は期間満了で消えています。取消判決を得ても、営業停止が「今さら解除される」わけではありません。
したがって原則として、訴えの利益は否定されます。
ここでよくある誤解が「違法なら争えるはず」という発想です。取消訴訟は違法の審査だけを目的とするものではなく、取消して地位を回復できるかが中心です。期間満了で回復の余地が消えているなら、原則として訴訟の意味が薄くなります。
失効・消滅
免許・許可など、一定の期間や前提関係に結びつく処分では、前提が消えることで処分の効果が消滅することがあります。
この場合も、取消しても地位が回復しないなら、原則として訴えの利益は否定されます。
ただし、ここは後の「例外」でひっくり返ることがあります。
「失効している=必ず利益なし」と決め打ちすると、試験で落とし穴になります。いったん原則を理解した上で、例外で切り替える準備をしておきます。
代替処分(新しい処分が出ているケース)
行政庁が旧処分を踏まえて新しい処分を出した場合、旧処分を取消す意味が残るかが問題になります。
新処分により旧処分の効果が完全に吸収され、旧処分が独立した意味を持たないなら、旧処分の取消しを求めても地位は回復しません。原則として訴えの利益は否定されます。
ここで試験が狙うのは、「新処分がある=常に旧処分の利益なし」ではない点です。
新処分があっても、旧処分の取消しに独立した意味が残る場合があります(後の例外で扱います)。
ありがちな誤読:抽象的な不利益の主張
「処分歴が残ると将来なんとなく不利」「評判が落ちた」「気持ちが収まらない」
こういった主張は、試験上は基本的に訴えの利益を基礎づけません。必要なのは、法律上の地位に具体的な影響が残ることです。
ここまでのまとめとして、原則はシンプルです。
- 取消しても地位が回復しないなら、原則として訴えの利益は否定
しかし、行政書士試験の本丸はこの次です。
次のパートで、例外的に訴えの利益が認められる場面を「何が具体的なら切り替えるのか」という観点で整理します。
例外:訴えの利益が残る(残りやすい)場面
原則は「取消しても変わらないなら利益なし」ですが、例外は「取消すことで将来も含めて法律上の地位が改善するなら利益あり」です。ここを具体的に押さえます。
将来の不利益を回避できる(前歴効果がある)
代表例は、処分が将来の不利益処分の要件や判断材料として法令上予定されているケースです。
たとえば、一定期間内に処分歴があると、次はより重い処分が科される、または許可要件が厳しくなる、などです。
この場合、処分の効力がすでに消えていても、取消判決により「処分歴」という将来の不利益の根拠が消える可能性があります。
つまり、取消すことで原告の法律上の地位が改善し得るため、訴えの利益が肯定されます。
ここでの決定打は「法令上予定されている具体的な不利益」です。
「将来不利かもしれない」というレベルでは切り替えません。試験はこの差を突いてきます。
旧処分の取消しに独立した意味が残る(代替処分があっても)
新しい処分が出ていても、旧処分の取消しに意味が残ることがあります。
たとえば、旧処分が将来の不利益の根拠になっている、旧処分が別の法的効果を持ち続ける、などです。
ここは問題文の素材次第で結論が分かれるため、「新処分の存在」だけで判断しないことが大切です。
やることは一つで、「旧処分を取消したら法律上の地位が改善するか」を個別に確認します。
国家賠償請求との関係(試験での扱い)
ここは選択肢がややこしく作られがちです。結論から言うと、国家賠償請求を予定していることだけで、当然に訴えの利益が認められるとは限りません。
取消判決があれば違法性の判断が得られ、国家賠償請求で有利に働くことはあります。
ただし、それが直ちに「取消判決で法律上の地位が回復・改善される」とは言えない場合もあります。試験では「常に認められる」と言い切る選択肢が出たら疑ってください。
押さえ方としては、次の感覚が実戦的です。
- 取消判決が将来の法的地位に具体的影響を与えるなら、利益が認められやすい
- 影響が抽象的・間接的にとどまるなら、利益が否定されやすい
例外の見抜き方:具体性チェック
例外に切り替えるときは、次の問いを使います。
- 将来の不利益は「法令上」予定されているか
- その不利益は「客観的に」予測できるか
- 取消判決でその不利益は「実際に」除去・軽減できるか
この3つがそろうほど、訴えの利益は肯定される方向になります。
次のパートでは、ここまでの知識を「本試験で迷わない判断手順」に落とし込み、ひっかけ表現への対処と、最後のまとめ・CTAまで仕上げます。
試験で迷わないための判断手順
行政書士試験では、訴えの利益は「言葉の暗記」ではなく、「処理の順番」が問われます。問題を見たら、次の順で考えます。
- 処分は今も効力を持つか
- 取消したら原告の法律上の地位は回復・改善するか
- いま変わらなくても、将来の具体的不利益を除けるか
- その不利益は法令上予定されたものか
この順番を固定すると、選択肢の文章が長くてもブレません。
ひっかけ表現への対処
試験は極端な言い方を好みます。次の言葉が出たら警戒してください。
- 「常に」訴えの利益が否定される
- 「常に」訴えの利益が認められる
- 違法である以上、取消訴訟は認められる
取消訴訟では、違法性の有無と訴えの利益は別の問題です。
「違法かもしれない」ことを読ませて、そこに意識を集中させたうえで、「でも取消して何が変わる?」で落とすのが定番です。
ミスが起きる典型シーン(受験生あるあるの分解)
よくあるミスは、「期間満了=終了=全部終わり」と思い込むことです。
期間満了は原則として利益が否定されやすいのは確かですが、処分歴が将来の不利益の根拠になるなど、例外に切り替わる素材が問題文に置かれていることがあります。
逆に、例外に飛びついてしまうミスもあります。
「将来不利になりそう」という曖昧な文言だけで、訴えの利益を肯定してしまうパターンです。ここは具体性チェックに戻って、法令上予定された不利益かどうかを確認します。
ここはもう過去問をとにかく回して、慣れることも大事になります。
そういう感覚で身についてくるので、1発で理解はできなくてまったく問題ありません。
直前期の覚え方(短いフレーズ)
最後に、記憶に残しやすい形で要点をまとめます。
- 取消訴訟は「取消して地位が変わる」が中心
- 変わらないなら原則として利益は否定
- ただし「将来の具体的不利益」を除けるなら利益が残る
- 抽象的な不安は切る
まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございます、まとめです。
取消訴訟の訴えの利益は、結局のところ「勝って何が変わるか」の問題です。
期間満了や失効の素材が出たら、まず原則として利益が否定される方向から入りつつ、将来の具体的不利益(前歴効果など)が置かれていないかを確認します。
この切り替えができれば、過去問での取りこぼしは大きく減ります。
この時期の勉強の流れは「テキストでインプット→過去問でアウトプット→間違えた箇所は条文やテキストで確認」の往復が一番です。
リベンジ組は過去問をやり続けても良いと思いますが、しっかり解説まで読み込んで、落とし込みましょう。
CTA(やることが明確な締め)
ここまで読んだら、次にやることは一つです。
過去問で「取消訴訟」と「訴えの利益」が絡む問題を5問解き、各問題について次の一文だけメモしてください。
- 「取消して何が変わるか」
- 「将来の具体的不利益はあるか」
この2行が書けるようになれば、この論点は固まります。
今年、絶対合格目指して頑張っていきましょう!


