行政書士試験|無権代理とは?成立場面と基本構造を整理

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はじめに|無権代理は「代理理解の試金石」

行政書士試験の民法において、
無権代理は多くの受験生がつまずく論点です。

理由ははっきりしています。

  • 代理が成立していないのに話が進む
  • 誰に効果が帰属するのか分かりにくい
  • 表見代理と混ざりやすい

しかし逆に言えば、
無権代理を理解できれば、
代理分野はほぼ完成します。

この記事ではまず、
「無権代理とは何か」「なぜ問題になるのか」
という全体像を整理していきます。


この記事はこんな人向け

  • 無権代理の定義があいまい
  • 代理との違いをうまく説明できない
  • 追認・取消しの関係が整理できていない
  • 表見代理に入る前に土台を固めたい

無権代理とは何か|まずは一文で定義する

無権代理とは、
代理権がない者が、代理人であるかのように行った行為
をいいます。

ポイントは次の2点です。

  • 行為者に代理権がない
  • それでも代理行為の形をとっている

つまり、
「代理っぽいが、代理ではない」状態
が無権代理です。


代理と無権代理の決定的な違い

ここで、
前回の記事で整理した「代理」と比較します。

正常な代理

  • 代理権がある
  • 顕名がある
  • 効果は直接本人に帰属

無権代理

  • 代理権がない
  • 形式上は代理行為
  • 効果の帰属が未確定

この「未確定」という点が、
無権代理の核心です。


なぜ無権代理が問題になるのか

無権代理が問題になるのは、
関係者が3者いるからです。

  • 本人
  • 無権代理人
  • 相手方

それぞれの立場で、
守るべき利益が異なります。


本人の立場

本人から見れば、

  • 勝手に代理行為をされている
  • 知らない契約を押しつけられる可能性

があります。

したがって、
本人を不当に拘束することはできません。


相手方の立場

一方で相手方から見れば、

  • 正当な代理人だと思って契約した
  • いきなり無効と言われると困る

という事情があります。

無権代理の制度は、
本人保護と相手方保護の調整
として設計されています。


無権代理は「当然に無効」ではない

ここが、
行政書士試験で最も重要なポイントです。

無権代理行為は、
最初から無効になるわけではありません。

試験では、

無権代理行為は当然に無効である

という選択肢が、
定番の誤りとして出題されます。


無権代理行為の法的評価|未確定

無権代理行為の効果は、

  • 有効
  • 無効

のどちらでもなく、
未確定と整理されます。

そして、
この未確定状態を確定させる鍵が
本人の意思です。


本人がとれる態度は2つ

無権代理行為について、
本人がとれる態度は次の2つです。

  • 追認する
  • 追認しない

このどちらを選ぶかによって、
法律効果が大きく変わります。


追認とは何か(概要)

追認とは、
無権代理行為を後から認めることです。

追認がされると、

  • 無権代理行為は
  • 最初から有効だったもの

として扱われます。

※追認の細かい要件・効果は
 第2部で詳しく扱います。


追認しない場合はどうなるか

本人が追認しなければ、
無権代理行為は、

  • 本人には効果が帰属しない

という結論になります。

このとき、

  • 相手方
  • 無権代理人

の関係が問題になります。


無権代理人はどうなるのか

代理権がないのに、
代理人のように振る舞った者は、
一定の場合に責任を負うことがあります。

ただし、

  • いつ
  • どの範囲で

責任を負うかは、
細かい要件があります。

この点も、
行政書士試験の頻出論点です。


第1部まとめ|無権代理の位置づけをつかむ

第1部では、

  • 無権代理の定義
  • 代理との違い
  • なぜ問題になるのか
  • 効果が未確定であること

を整理しました。

ここで重要なのは、
無権代理は「失敗した代理」ではない
という理解です。

制度として、
意図的に未確定の状態が作られています。

無権代理の核心|「追認」によって何が起きるのか

第1部で確認したとおり、
無権代理行為の効果は未確定でした。

この未確定状態を、

  • 有効に確定させる
  • 無効として確定させる

その分岐点になるのが、追認です。

行政書士試験では、
無権代理=追認、というセットで
ほぼ必ず出題されます。


追認とは何か|定義を明確にする

追認とは、
無権代理行為について、本人が後からその効果を認めること
をいいます。

重要なのは、
追認は「代理権を後から与えること」とは違う、という点です。

  • 代理権の付与 → 将来に向かって効力
  • 追認 → 過去の行為をさかのぼって確定

この違いは、試験でよく狙われます。


追認の法的効果|さかのぼって有効になる

本人が追認をすると、
無権代理行為は、

  • 最初から有効だったもの

として扱われます。

これを
「遡及効(そきゅうこう)」
と呼びます。

つまり、

  • 行為時点では代理権がなかった
  • しかし追認によって、結果的に有効

という整理になります。


追認によって誰が拘束されるのか

追認がされると、

  • 本人
  • 相手方

の間で、
通常の代理と同じ効果が生じます。

一方で、

  • 無権代理人

は、原則として表舞台から退きます。


追認の方法|特別な形式は不要

追認は、

  • 書面
  • 口頭
  • 行為によるもの

など、
特別な形式は要求されません。

試験では、

  • 明示の追認
  • 黙示の追認

の区別が問われることがあります。


黙示の追認とは何か

黙示の追認とは、
本人の行動から、

  • 無権代理行為を認めた
  • その効果を受け入れた

と評価できる場合をいいます。

例えば、

  • 契約に基づく給付を受け取る
  • 契約内容を前提とした行動を取る

といった事情があると、
黙示の追認が問題になります。


追認できる人は誰か

追認できるのは、
無権代理行為の効果が帰属するはずだった本人です。

  • 相手方
  • 無権代理人

が追認することはできません。

この点も、
選択肢でよく混同させてきます。


追認できる時期|いつまで可能か

追認は、
原則としていつでもできます。

ただし、
この「いつでも」という点には、
重要な制限があります。


相手方の催告権

無権代理行為について、
相手方は、
本人に対して、

  • 追認するか
  • 追認しないか

確定させるよう求めることができます。

これを
「追認の催告」
といいます。


催告があった場合の効果

相手方が催告をし、
本人が一定期間内に意思表示をしない場合、

  • 追認を拒絶したもの

と扱われます。

この点は、
無権代理行為を
いつまでも宙ぶらりんにしないための仕組みです。


追認しない場合の効果

本人が追認しない場合、
無権代理行為は、

  • 本人には効果が帰属しない

ことが確定します。

すると、
次に問題になるのが、

  • 相手方はどうなるのか
  • 無権代理人はどうなるのか

という点です。


相手方の立場|無権代理を知らなかった場合

相手方が、

  • 無権代理であることを知らなかった
  • 知ることができなかった

場合、
相手方を一方的に切り捨てるのは不合理です。

この調整として、
無権代理人の責任が問題になります。


無権代理人の責任(概要)

無権代理人は、
一定の場合に、

  • 契約の履行
  • 損害賠償

といった責任を負うことがあります。

ただし、

  • 常に責任を負うわけではない
  • 相手方の状態によって結論が変わる

という点が重要です。

※無権代理人の責任の要件は
 第3部で詳しく整理します。


第2部まとめ|追認が分岐点になる

第2部では、

  • 追認の意味
  • 追認の効果
  • 明示・黙示の追認
  • 相手方の催告

を整理しました。

無権代理は、

追認があるか、ないか

ここを軸に、
すべての結論が分岐します。

無権代理人の責任|誰がどこまで負うのか

本人が追認しなかった場合、
無権代理行為は、

  • 本人には効果が帰属しない

ことが確定します。

そこで次に問題になるのが、
無権代理人の責任です。

行政書士試験では、
この部分が非常に細かく問われます。


無権代理人の責任が問題になる前提

無権代理人の責任が問題になるのは、
次の条件を満たす場合です。

  • 本人が追認しない
  • 相手方が一定の保護に値する

このどちらかが欠けると、
話が変わってきます。


無権代理人が負う可能性のある責任

無権代理人は、
一定の場合に、
相手方に対して、

  • 契約の履行
  • 損害賠償

の責任を負うことがあります。

ここで重要なのは、
選択権が誰にあるかです。


履行責任と損害賠償責任

無権代理人の責任は、
相手方の選択によって、

  • 履行
  • 損害賠償

のいずれかになります。

行政書士試験では、
「無権代理人は必ず損害賠償責任を負う」
という選択肢がよく出ますが、誤りです。


相手方が保護される条件

無権代理人が責任を負うためには、
相手方が善意であることが必要です。

善意とは、

  • 無権代理であることを知らなかった

という状態を指します。

この点を落とすと、
選択肢判断を誤ります。


相手方が悪意の場合

相手方が、

  • 無権代理であることを知っていた

場合、
相手方は保護されません。

したがって、
無権代理人は、
原則として責任を負いません。


相手方が有過失の場合

ここで注意すべきなのが、
相手方に過失がある場合です。

行政書士試験では、

  • 善意無過失
  • 善意有過失

の区別が問われることがあります。

無権代理人の責任については、
過失があるかどうかも影響します。


無権代理人が責任を免れる場合

無権代理人は、
次のような場合には
責任を負いません。

  • 相手方が悪意
  • 相手方に重大な過失がある
  • 無権代理人自身が制限行為能力者

この「制限行為能力者」の点は、
特にひっかけとして出題されます。


無権代理人が制限行為能力者の場合

無権代理人が、

  • 未成年者
  • 成年被後見人

などの制限行為能力者である場合、
原則として責任を負いません。

理由は、

  • 判断能力が十分でない者に
  • 重い責任を負わせるのは酷

という点にあります。


無権代理人の責任と本人の責任の関係

ここで整理しておきたいのは、

  • 無権代理人の責任
  • 本人の責任

は、別物だという点です。

本人が追認しなければ、
本人は原則として拘束されません。

その代わりに、
一定の場合に無権代理人が責任を負います。


試験での典型的なひっかけ

無権代理人の責任について、
行政書士試験でよく出る誤りは次のとおりです。

  • 無権代理人は常に責任を負う
  • 相手方が悪意でも責任を負う
  • 制限行為能力者でも責任を負う

いずれも誤りです。


無権代理と表見代理の境界線

ここで、
次回テーマとなる「表見代理」との関係を
軽く整理しておきます。

  • 無権代理
     → 原則として本人は拘束されない
  • 表見代理
     → 一定の場合に本人が拘束される

この違いは、
本人の帰責性にあります。

詳細は、
次回記事で扱います。


第3部まとめ|責任の所在を見極める

第3部では、

  • 無権代理人の責任
  • 相手方の善意・悪意
  • 責任を免れる場合

を整理しました。

無権代理は、
誰を守るかのバランスで設計されています。

無権代理の全体構造を一気に整理する

ここまでで、無権代理について次の点を見てきました。

  • 無権代理の定義
  • 効果が「未確定」であること
  • 本人による追認
  • 相手方の立場
  • 無権代理人の責任

最後に、
行政書士試験で無権代理の問題を解くための思考手順として、
全体像を一気に整理します。


行政書士試験における無権代理の思考手順

無権代理の問題は、
感覚で解こうとすると必ず混乱します。

次の順番で、
機械的に処理するのが最も安全です。


STEP① 代理の形式をとっているか

まず確認すべきは、

  • 本人以外の者が
  • 本人の名で
  • 法律行為をしているか

ここで「代理の形をとっていない」場合、
無権代理の問題には入りません。


STEP② 代理権はあるか

次に、

  • 行為者に代理権があるか

を確認します。

代理権があれば、
無権代理の問題ではありません。

代理権がなければ、
ここで初めて無権代理の検討に入ります。


STEP③ 無権代理行為の効果は未確定

代理権がない場合でも、

  • 行為が当然に無効
  • 行為が当然に有効

と決めつけてはいけません。

無権代理行為の効果は、
本人の意思が確定するまで未確定
というのが大原則です。


STEP④ 本人が追認したか

次に確認するのは、

  • 本人が追認したか

です。

追認がある場合

  • 無権代理行為は
  • 最初から有効だったもの

として扱われます。

この時点で、
無権代理の問題は終了です。


STEP⑤ 本人が追認しない場合

本人が追認しない場合、

  • 本人は拘束されない

ことが確定します。

ここで初めて、
相手方と無権代理人の関係が問題になります。


STEP⑥ 相手方は保護されるか

相手方について、

  • 無権代理であることを知らなかったか
  • 知ることができなかったか

を確認します。

  • 善意 → 保護の余地あり
  • 悪意 → 原則として保護されない

この判断が、
次の結論を左右します。


STEP⑦ 無権代理人の責任を検討する

相手方が善意で、
本人が追認しない場合、

  • 無権代理人が
  • 履行または損害賠償

の責任を負う可能性があります。

ただし、

  • 相手方の過失
  • 無権代理人の属性

によって、
結論が変わる点に注意が必要です。


無権代理を図でイメージする

文章だけで混乱する場合は、
次のように整理すると理解しやすくなります。

https://assets.st-note.com/img/1713167954499-RMWdNR1O8q.jpg?fit=bounds&height=2000&quality=85&width=2000
https://ss-up.net/img/003back6.jpg
  • 本人:追認するかどうかを決める立場
  • 相手方:善意か悪意かで扱いが変わる
  • 無権代理人:一定条件で責任を負う

この三者の利害調整が、
無権代理制度の本質です。


無権代理でよくある誤解を最終確認

試験直前に、
必ず確認しておきたい誤解をまとめます。


誤解① 無権代理行為は当然に無効

誤りです。

無権代理行為は、
未確定という中間状態にあります。


誤解② 追認は代理権の後付け

誤りです。

追認は、

  • 過去の行為を
  • さかのぼって有効にする

点が本質です。


誤解③ 無権代理人は必ず責任を負う

誤りです。

  • 相手方が悪意
  • 相手方に重大な過失
  • 無権代理人が制限行為能力者

などの場合、
責任を負いません。


無権代理と表見代理の分岐点

無権代理を理解したうえで、
次に学ぶのが表見代理です。

両者の決定的な違いは、
次の点にあります。

  • 無権代理
     → 原則として本人は拘束されない
  • 表見代理
     → 一定の場合に本人が拘束される

この違いは、
本人にどの程度の落ち度があるか
という視点で整理されます。


無権代理の到達目標(試験レベル)

行政書士試験対策としては、
次の状態になっていれば合格ラインです。

  • 無権代理を一文で定義できる
  • 効果が未確定である理由を説明できる
  • 追認があればどうなるか分かる
  • 追認がなければ誰の責任か判断できる

ここまで理解できていれば、
無権代理は「得点源」に変わります。


まとめ|無権代理は整理すれば怖くない

無権代理は、

  • 用語が多い
  • 人物関係が複雑

という理由で、
苦手意識を持たれがちです。

しかし実際には、

  1. 代理権の有無
  2. 追認の有無
  3. 相手方の状態
  4. 無権代理人の責任

この順番で整理するだけで、
結論は必ず一つに定まります。

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