行政書士試験|無権代理とは?成立場面と基本構造を整理
Contents
- 1 はじめに|無権代理は「代理理解の試金石」
- 2 この記事はこんな人向け
- 3 無権代理とは何か|まずは一文で定義する
- 4 代理と無権代理の決定的な違い
- 5 なぜ無権代理が問題になるのか
- 6 本人の立場
- 7 相手方の立場
- 8 無権代理は「当然に無効」ではない
- 9 無権代理行為の法的評価|未確定
- 10 本人がとれる態度は2つ
- 11 追認とは何か(概要)
- 12 追認しない場合はどうなるか
- 13 無権代理人はどうなるのか
- 14 第1部まとめ|無権代理の位置づけをつかむ
- 15 無権代理の核心|「追認」によって何が起きるのか
- 16 追認とは何か|定義を明確にする
- 17 追認の法的効果|さかのぼって有効になる
- 18 追認によって誰が拘束されるのか
- 19 追認の方法|特別な形式は不要
- 20 黙示の追認とは何か
- 21 追認できる人は誰か
- 22 追認できる時期|いつまで可能か
- 23 相手方の催告権
- 24 催告があった場合の効果
- 25 追認しない場合の効果
- 26 相手方の立場|無権代理を知らなかった場合
- 27 無権代理人の責任(概要)
- 28 第2部まとめ|追認が分岐点になる
- 29 無権代理人の責任|誰がどこまで負うのか
- 30 無権代理人の責任が問題になる前提
- 31 無権代理人が負う可能性のある責任
- 32 履行責任と損害賠償責任
- 33 相手方が保護される条件
- 34 相手方が悪意の場合
- 35 相手方が有過失の場合
- 36 無権代理人が責任を免れる場合
- 37 無権代理人が制限行為能力者の場合
- 38 無権代理人の責任と本人の責任の関係
- 39 試験での典型的なひっかけ
- 40 無権代理と表見代理の境界線
- 41 第3部まとめ|責任の所在を見極める
- 42 無権代理の全体構造を一気に整理する
- 43 行政書士試験における無権代理の思考手順
- 44 無権代理を図でイメージする
- 45 無権代理でよくある誤解を最終確認
- 46 無権代理と表見代理の分岐点
- 47 無権代理の到達目標(試験レベル)
- 48 まとめ|無権代理は整理すれば怖くない
はじめに|無権代理は「代理理解の試金石」
行政書士試験の民法において、
無権代理は多くの受験生がつまずく論点です。
理由ははっきりしています。
- 代理が成立していないのに話が進む
- 誰に効果が帰属するのか分かりにくい
- 表見代理と混ざりやすい
しかし逆に言えば、
無権代理を理解できれば、
代理分野はほぼ完成します。
この記事ではまず、
「無権代理とは何か」「なぜ問題になるのか」
という全体像を整理していきます。
この記事はこんな人向け
- 無権代理の定義があいまい
- 代理との違いをうまく説明できない
- 追認・取消しの関係が整理できていない
- 表見代理に入る前に土台を固めたい
無権代理とは何か|まずは一文で定義する
無権代理とは、
代理権がない者が、代理人であるかのように行った行為
をいいます。
ポイントは次の2点です。
- 行為者に代理権がない
- それでも代理行為の形をとっている
つまり、
「代理っぽいが、代理ではない」状態
が無権代理です。
代理と無権代理の決定的な違い
ここで、
前回の記事で整理した「代理」と比較します。
正常な代理
- 代理権がある
- 顕名がある
- 効果は直接本人に帰属
無権代理
- 代理権がない
- 形式上は代理行為
- 効果の帰属が未確定
この「未確定」という点が、
無権代理の核心です。
なぜ無権代理が問題になるのか
無権代理が問題になるのは、
関係者が3者いるからです。
- 本人
- 無権代理人
- 相手方
それぞれの立場で、
守るべき利益が異なります。
本人の立場
本人から見れば、
- 勝手に代理行為をされている
- 知らない契約を押しつけられる可能性
があります。
したがって、
本人を不当に拘束することはできません。
相手方の立場
一方で相手方から見れば、
- 正当な代理人だと思って契約した
- いきなり無効と言われると困る
という事情があります。
無権代理の制度は、
本人保護と相手方保護の調整
として設計されています。
無権代理は「当然に無効」ではない
ここが、
行政書士試験で最も重要なポイントです。
無権代理行為は、
最初から無効になるわけではありません。
試験では、
無権代理行為は当然に無効である
という選択肢が、
定番の誤りとして出題されます。
無権代理行為の法的評価|未確定
無権代理行為の効果は、
- 有効
- 無効
のどちらでもなく、
未確定と整理されます。
そして、
この未確定状態を確定させる鍵が
本人の意思です。
本人がとれる態度は2つ
無権代理行為について、
本人がとれる態度は次の2つです。
- 追認する
- 追認しない
このどちらを選ぶかによって、
法律効果が大きく変わります。
追認とは何か(概要)
追認とは、
無権代理行為を後から認めることです。
追認がされると、
- 無権代理行為は
- 最初から有効だったもの
として扱われます。
※追認の細かい要件・効果は
第2部で詳しく扱います。
追認しない場合はどうなるか
本人が追認しなければ、
無権代理行為は、
- 本人には効果が帰属しない
という結論になります。
このとき、
- 相手方
- 無権代理人
の関係が問題になります。
無権代理人はどうなるのか
代理権がないのに、
代理人のように振る舞った者は、
一定の場合に責任を負うことがあります。
ただし、
- いつ
- どの範囲で
責任を負うかは、
細かい要件があります。
この点も、
行政書士試験の頻出論点です。
第1部まとめ|無権代理の位置づけをつかむ
第1部では、
- 無権代理の定義
- 代理との違い
- なぜ問題になるのか
- 効果が未確定であること
を整理しました。
ここで重要なのは、
無権代理は「失敗した代理」ではない
という理解です。
制度として、
意図的に未確定の状態が作られています。
無権代理の核心|「追認」によって何が起きるのか
第1部で確認したとおり、
無権代理行為の効果は未確定でした。
この未確定状態を、
- 有効に確定させる
- 無効として確定させる
その分岐点になるのが、追認です。
行政書士試験では、
無権代理=追認、というセットで
ほぼ必ず出題されます。
追認とは何か|定義を明確にする
追認とは、
無権代理行為について、本人が後からその効果を認めること
をいいます。
重要なのは、
追認は「代理権を後から与えること」とは違う、という点です。
- 代理権の付与 → 将来に向かって効力
- 追認 → 過去の行為をさかのぼって確定
この違いは、試験でよく狙われます。
追認の法的効果|さかのぼって有効になる
本人が追認をすると、
無権代理行為は、
- 最初から有効だったもの
として扱われます。
これを
「遡及効(そきゅうこう)」
と呼びます。
つまり、
- 行為時点では代理権がなかった
- しかし追認によって、結果的に有効
という整理になります。
追認によって誰が拘束されるのか
追認がされると、
- 本人
- 相手方
の間で、
通常の代理と同じ効果が生じます。
一方で、
- 無権代理人
は、原則として表舞台から退きます。
追認の方法|特別な形式は不要
追認は、
- 書面
- 口頭
- 行為によるもの
など、
特別な形式は要求されません。
試験では、
- 明示の追認
- 黙示の追認
の区別が問われることがあります。
黙示の追認とは何か
黙示の追認とは、
本人の行動から、
- 無権代理行為を認めた
- その効果を受け入れた
と評価できる場合をいいます。
例えば、
- 契約に基づく給付を受け取る
- 契約内容を前提とした行動を取る
といった事情があると、
黙示の追認が問題になります。
追認できる人は誰か
追認できるのは、
無権代理行為の効果が帰属するはずだった本人です。
- 相手方
- 無権代理人
が追認することはできません。
この点も、
選択肢でよく混同させてきます。
追認できる時期|いつまで可能か
追認は、
原則としていつでもできます。
ただし、
この「いつでも」という点には、
重要な制限があります。
相手方の催告権
無権代理行為について、
相手方は、
本人に対して、
- 追認するか
- 追認しないか
を確定させるよう求めることができます。
これを
「追認の催告」
といいます。
催告があった場合の効果
相手方が催告をし、
本人が一定期間内に意思表示をしない場合、
- 追認を拒絶したもの
と扱われます。
この点は、
無権代理行為を
いつまでも宙ぶらりんにしないための仕組みです。
追認しない場合の効果
本人が追認しない場合、
無権代理行為は、
- 本人には効果が帰属しない
ことが確定します。
すると、
次に問題になるのが、
- 相手方はどうなるのか
- 無権代理人はどうなるのか
という点です。
相手方の立場|無権代理を知らなかった場合
相手方が、
- 無権代理であることを知らなかった
- 知ることができなかった
場合、
相手方を一方的に切り捨てるのは不合理です。
この調整として、
無権代理人の責任が問題になります。
無権代理人の責任(概要)
無権代理人は、
一定の場合に、
- 契約の履行
- 損害賠償
といった責任を負うことがあります。
ただし、
- 常に責任を負うわけではない
- 相手方の状態によって結論が変わる
という点が重要です。
※無権代理人の責任の要件は
第3部で詳しく整理します。
第2部まとめ|追認が分岐点になる
第2部では、
- 追認の意味
- 追認の効果
- 明示・黙示の追認
- 相手方の催告
を整理しました。
無権代理は、
追認があるか、ないか
ここを軸に、
すべての結論が分岐します。
無権代理人の責任|誰がどこまで負うのか
本人が追認しなかった場合、
無権代理行為は、
- 本人には効果が帰属しない
ことが確定します。
そこで次に問題になるのが、
無権代理人の責任です。
行政書士試験では、
この部分が非常に細かく問われます。
無権代理人の責任が問題になる前提
無権代理人の責任が問題になるのは、
次の条件を満たす場合です。
- 本人が追認しない
- 相手方が一定の保護に値する
このどちらかが欠けると、
話が変わってきます。
無権代理人が負う可能性のある責任
無権代理人は、
一定の場合に、
相手方に対して、
- 契約の履行
- 損害賠償
の責任を負うことがあります。
ここで重要なのは、
選択権が誰にあるかです。
履行責任と損害賠償責任
無権代理人の責任は、
相手方の選択によって、
- 履行
- 損害賠償
のいずれかになります。
行政書士試験では、
「無権代理人は必ず損害賠償責任を負う」
という選択肢がよく出ますが、誤りです。
相手方が保護される条件
無権代理人が責任を負うためには、
相手方が善意であることが必要です。
善意とは、
- 無権代理であることを知らなかった
という状態を指します。
この点を落とすと、
選択肢判断を誤ります。
相手方が悪意の場合
相手方が、
- 無権代理であることを知っていた
場合、
相手方は保護されません。
したがって、
無権代理人は、
原則として責任を負いません。
相手方が有過失の場合
ここで注意すべきなのが、
相手方に過失がある場合です。
行政書士試験では、
- 善意無過失
- 善意有過失
の区別が問われることがあります。
無権代理人の責任については、
過失があるかどうかも影響します。
無権代理人が責任を免れる場合
無権代理人は、
次のような場合には
責任を負いません。
- 相手方が悪意
- 相手方に重大な過失がある
- 無権代理人自身が制限行為能力者
この「制限行為能力者」の点は、
特にひっかけとして出題されます。
無権代理人が制限行為能力者の場合
無権代理人が、
- 未成年者
- 成年被後見人
などの制限行為能力者である場合、
原則として責任を負いません。
理由は、
- 判断能力が十分でない者に
- 重い責任を負わせるのは酷
という点にあります。
無権代理人の責任と本人の責任の関係
ここで整理しておきたいのは、
- 無権代理人の責任
- 本人の責任
は、別物だという点です。
本人が追認しなければ、
本人は原則として拘束されません。
その代わりに、
一定の場合に無権代理人が責任を負います。
試験での典型的なひっかけ
無権代理人の責任について、
行政書士試験でよく出る誤りは次のとおりです。
- 無権代理人は常に責任を負う
- 相手方が悪意でも責任を負う
- 制限行為能力者でも責任を負う
いずれも誤りです。
無権代理と表見代理の境界線
ここで、
次回テーマとなる「表見代理」との関係を
軽く整理しておきます。
- 無権代理
→ 原則として本人は拘束されない - 表見代理
→ 一定の場合に本人が拘束される
この違いは、
本人の帰責性にあります。
詳細は、
次回記事で扱います。
第3部まとめ|責任の所在を見極める
第3部では、
- 無権代理人の責任
- 相手方の善意・悪意
- 責任を免れる場合
を整理しました。
無権代理は、
誰を守るかのバランスで設計されています。
無権代理の全体構造を一気に整理する
ここまでで、無権代理について次の点を見てきました。
- 無権代理の定義
- 効果が「未確定」であること
- 本人による追認
- 相手方の立場
- 無権代理人の責任
最後に、
行政書士試験で無権代理の問題を解くための思考手順として、
全体像を一気に整理します。
行政書士試験における無権代理の思考手順
無権代理の問題は、
感覚で解こうとすると必ず混乱します。
次の順番で、
機械的に処理するのが最も安全です。
STEP① 代理の形式をとっているか
まず確認すべきは、
- 本人以外の者が
- 本人の名で
- 法律行為をしているか
ここで「代理の形をとっていない」場合、
無権代理の問題には入りません。
STEP② 代理権はあるか
次に、
- 行為者に代理権があるか
を確認します。
代理権があれば、
無権代理の問題ではありません。
代理権がなければ、
ここで初めて無権代理の検討に入ります。
STEP③ 無権代理行為の効果は未確定
代理権がない場合でも、
- 行為が当然に無効
- 行為が当然に有効
と決めつけてはいけません。
無権代理行為の効果は、
本人の意思が確定するまで未確定
というのが大原則です。
STEP④ 本人が追認したか
次に確認するのは、
- 本人が追認したか
です。
追認がある場合
- 無権代理行為は
- 最初から有効だったもの
として扱われます。
この時点で、
無権代理の問題は終了です。
STEP⑤ 本人が追認しない場合
本人が追認しない場合、
- 本人は拘束されない
ことが確定します。
ここで初めて、
相手方と無権代理人の関係が問題になります。
STEP⑥ 相手方は保護されるか
相手方について、
- 無権代理であることを知らなかったか
- 知ることができなかったか
を確認します。
- 善意 → 保護の余地あり
- 悪意 → 原則として保護されない
この判断が、
次の結論を左右します。
STEP⑦ 無権代理人の責任を検討する
相手方が善意で、
本人が追認しない場合、
- 無権代理人が
- 履行または損害賠償
の責任を負う可能性があります。
ただし、
- 相手方の過失
- 無権代理人の属性
によって、
結論が変わる点に注意が必要です。
無権代理を図でイメージする
文章だけで混乱する場合は、
次のように整理すると理解しやすくなります。


- 本人:追認するかどうかを決める立場
- 相手方:善意か悪意かで扱いが変わる
- 無権代理人:一定条件で責任を負う
この三者の利害調整が、
無権代理制度の本質です。
無権代理でよくある誤解を最終確認
試験直前に、
必ず確認しておきたい誤解をまとめます。
誤解① 無権代理行為は当然に無効
誤りです。
無権代理行為は、
未確定という中間状態にあります。
誤解② 追認は代理権の後付け
誤りです。
追認は、
- 過去の行為を
- さかのぼって有効にする
点が本質です。
誤解③ 無権代理人は必ず責任を負う
誤りです。
- 相手方が悪意
- 相手方に重大な過失
- 無権代理人が制限行為能力者
などの場合、
責任を負いません。
無権代理と表見代理の分岐点
無権代理を理解したうえで、
次に学ぶのが表見代理です。
両者の決定的な違いは、
次の点にあります。
- 無権代理
→ 原則として本人は拘束されない - 表見代理
→ 一定の場合に本人が拘束される
この違いは、
本人にどの程度の落ち度があるか
という視点で整理されます。
無権代理の到達目標(試験レベル)
行政書士試験対策としては、
次の状態になっていれば合格ラインです。
- 無権代理を一文で定義できる
- 効果が未確定である理由を説明できる
- 追認があればどうなるか分かる
- 追認がなければ誰の責任か判断できる
ここまで理解できていれば、
無権代理は「得点源」に変わります。
まとめ|無権代理は整理すれば怖くない
無権代理は、
- 用語が多い
- 人物関係が複雑
という理由で、
苦手意識を持たれがちです。
しかし実際には、
- 代理権の有無
- 追認の有無
- 相手方の状態
- 無権代理人の責任
この順番で整理するだけで、
結論は必ず一つに定まります。

